気が付きにくい「猫のシックハウス症候群」にご注意

2021/08/02(月) 猫と暮らす家健康の話

人間のシックハウス症候群は一時期話題になりましたが、実はペットにも同様の健康被害が報告されています。

 建築基準法における「シックハウス法」の制定は、2003年に制定されていますが、2004年頃には、ペットにもシックハウス症候群という診断がくだされはじめ、各地の獣医さんがHPやブログで警鐘を鳴らしはじめました。

2010年には環境省から「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」として、次のように発表されています。

タバコや化学物質の影響 タバコの副流煙は人だけでなく一緒に暮らす犬や猫の健康にも悪影響を与える可能性が あります。受動喫煙の害に気をつけてください。 消臭剤、殺虫剤などの化学薬品にも注意して、犬や猫の近くで使用することは控えましょう。 また、スプレーなどをまくと下に溜まりますので、換気を良くするようにしましょう。犬や猫は壁 紙の接着剤など、いわゆるシックハウス症候群の原因物質になるようなものに対しても敏感 です。これらの化学物質は、嗅覚の鋭い犬や猫には想像以上のストレスとなる可能性があり ます。

猫のシックハウス症候群の症状の一例

・原因もなくイライラして、外へ逃げようとする。(性格なのかと誤解)
・疲れやすく、以前より寝ることが多い。(内臓疾患と間違えられやすい)
・鼻水がでたり、視線が定まらない。  (感染症と間違えられやすい)
・せき込む。             (感染症と間違えられやすい)
・嘔吐と下痢が度々起こる。      (感染症と間違えられやすい)
・肌に赤みが出たり、かゆがる。    (皮膚疾患・アレルギーと間違えられやすい)
などなど

 

猫のシックハウス症候群や人工化学物質の害の主な原因物質

  • 新しい建材(壁クロスやフローリング・建具や接着剤等)・新しい家具家電から放散される揮発性有機化合物
  • タバコの副流煙、受動喫煙
  • 消臭剤・芳香剤・香水・香りの強い洗剤や柔軟剤の香り成分や、用途の人工化学物質。
  • 防虫剤・殺虫剤(衣類・蚊・ゴキブリ・ダニ用噴霧型)の成分
  • 農薬(家庭菜園や庭用)
  • アロマオイル(ティーツリー)

 

なぜ猫は、人工化学物質に弱いのか

  1. 有害な人工化学物質の多くは空気より重い為、床に滞留する
  2. 猫の肝臓の解毒能力は、他の動物よりもかなり劣る
  3. 猫の皮膚はヒトや犬よりもずっと薄く、揮発性薬物を皮膚から吸収しやすい
  4. 猫の皮膚や被毛に付着した化学物質は、グルーミングで舐めとり口から吸収してしまう
  5. 猫の赤血球も毒物で酸化されて壊れやすい(溶血しやすい)

 

最近の猫の人工化学物質病気事情

最近、猫にポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)(臭素系難燃剤)が高蓄積していることが判明し、ネコの甲状腺機能亢進症との関連性が強く疑われています。

猫の爪とぎスポットになってしまっている壁も床、猫のおもちゃも、材質や添加物を気にしたいところです。
出典:(大阪市の南大阪動物病院センターHP)2020.10.1医院長コラムより

 

ペット(愛玩動物)と中毒

猫は手でオモチャにして弄ぶ習性から手や身体についたものを舐めての事故が多いです。猫は好奇心が旺盛なこともあり、屋外では除草剤/殺鼠剤や屋内では漂白剤や匂いの強い食品と一緒にあった乾燥剤を囓ったり、スルメなどの塩分の多い乾物類を食べたりして中毒を起こします。この他ユリ科の全植物が猫には禁忌とされておりますが、含まれる毒の成分に反応するのかは不明です。解毒剤となる特効薬はありませんので、もし口にしたのを目撃したら、直ちに催吐あるいは胃洗浄を行う必要があります。
出典:獣医師広報版中毒リスト

  

出典:滋賀県近江八幡市キャットクリニック ブログ 
 柔軟剤の症例1

高残香性柔軟剤を使用するようになった家庭で飼われていた猫が、流涎、斜頸、元気食欲の低下で来院。肝酵素値の上昇、腎機能の低下が認められた。高残香性柔軟剤の使用を中止したところ、症状は改善した。

 柔軟剤の症例2

同様に、高残香性柔軟剤の使用を開始した4日後に、意識混迷で横臥したまま連れてこられた猫では、血液検査で白血球数の増加、軽度の貧血、肝酵素値の上昇、腎機能の低下が認められた。入院治療で3日後に意識回復し、初日の血液検査の異常値はすべて改善が認められた。自宅での高残香性柔軟剤の使用を中止して退院とした。その後数年が経過するが再発は無い。

柔軟剤と除菌スプレー症例

飼い主は、非常に強力な高残香性柔軟剤、高残香性洗濯用洗剤を使用し、香り付きの消臭・除菌スプレーをこまめに、ありとあらゆるものに噴霧していた。洗濯物はサンルームに干していたが、飼っているペキニーズは好んでこのサンルームで昼寝をしていた。その3年間、ペキニーズは時折『キューン、キューン』と鳴き出してうずくまり、呼吸困難となるという発作を繰り返していた。常に眼脂・流涙もひどく、治らなかった。その後、飼い主自身が化学物質過敏症を発症したため、これらの使用をやめたところ、ペキニーズの上記の症状も全て消失した。

 塩素系洗浄剤の症例1

飼い主が、浴室で塩素系洗浄剤をスプレーしている様子を後方で見学していた猫が、翌日より元気食欲の低下、虚脱、徐脈を認めた。血液検査では軽度腎機能の低下があり、入院治療とした。入院3日後に呼吸困難となり、6日後に胸水が貯留した。各種の検査により、呼吸器障害による急性肺高血圧症に陥ったと診断した。その後は回復し、以後3年間再発は無い。

 庭に散布した農薬

また、バラの消毒をした後、そのまま着替えをしないで猫を撫でた結果、中毒症状になった例もあります。

 

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