建物の工法に「ツーバイフォー工法」という木造の工法があるのはご存じでしょうか?!
国交省の調べでは、平成元年から25年で戸建住宅は2.2倍増・共同建等は8.8倍増と住宅着工の統計であらわされている注目度の高い木造住宅です。
人気の秘密と、災害における実績を紹介します。
ツーバイフォー工法の被災の歴史
プラットフォーム工法(ツーバイフォー工法)は、19世紀アメリカの教会建築からが始ったと言われています。欧米では標準的な木造住宅ですが、本格的に日本に流通するようになったのは、住宅金融公庫が適用になった1973年三井ホームが中心となって建築されました。有形文化財に指定されているツーバイフォー工法建築物の中に、多大な災害を乗り越えた3つの建物を紹介します。
〇「札幌の時計台」1878年に名言「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士の構想に基づき建設されました
ツーバイフォー工法の前身のバルーンフレーム工法として日本最古の時計台です。
2回の火災と2回の改修工事を経て、今もなお札幌の大通公園の観光名所になっています。
〇「大磯迎賓館(旧木下家別邸)」日本最古のツーバイフォー住宅(神奈川県大磯町)
大磯迎賓館は建築家:小笹三郎(Sabro Ozasa)氏によって1912年に建築され、2012年には国登録有形文化財・景観重要建築物に登録されました。1923年の関東大震災でも倒壊しなかった数少ない建築物としても有名です。
また、海辺の高台に立地の為に、100年を超す海風の湿気や台風など被害にも耐え、現在イタリアンレストランが併設され、結婚式場にもなっています。
〇 「富永家住宅主屋」(兵庫県神戸市東灘区)
1920年に建築され現在も持ち主が住まわれる神戸市有形文化財です。
1995年阪神淡路大震災では、100m先の阪神高速道路の高架が倒壊する大被害の状況下にもかかわらず、築74年の富永家住宅主屋が無傷であった事がとても有名になりました。
ツーバイフォーが人気の理由
<耐震性>
何といっても、過去の大震災でツーバイフォー住宅は、倒壊ゼロを誇っています。国内の大地震におけるツーバイフォー工法の住宅の被害が、(社)ツーバイフォー協会によって次のように出されています。
―新潟中越大地震―
新潟県中越地方を中心に、マグニチュード6.8、震度7の大地震が襲いました。
このため家屋の被害は全壊・半壊が約18,800棟、一部損壊を含めると全部で約9万棟もの住宅が損壊の被害に遭ったといわれます。そして、ツーバイフォー住宅の大きな被害は報告されていません。
―阪神淡路大震災―
兵庫県南部を襲った阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)。大都市の直下で発生した地震で、マグニチュード7.3、震度7でした。
この地震による家屋の被害は、全壊約10万1,000棟、半壊を含めた一部損壊が約28万9,000棟以上(平成7年4月24日の自治省(現・総務省)消防庁発表より)。しかし、このような壊滅的な状況下でさえ、ツーバイフォー住宅に大きな被害はありませんでした。被災地のツーバイフォー住宅のうち96.8%がとくに補修をしなくても継続して居住可能な状態を保ったことがわかっています。
死者の約9割にあたる人が建物の倒壊による犠牲者といわれる阪神・淡路大震災。このデータからも住まいの耐震性がいかに大切であるかわかります。
―東日本大震災―
我が国、観測史上最大のマグニチュード9.0、震度7で、東北から関東地方にかけての広範囲に、津波と強震よる人的・物的被害が多数発生し、震度5を超える余震が続いていました。
調査対象住宅は20,772戸(平成23年7月28日現在)ですが、そのうち、当面補修をしなくとも居住に支障ない住宅は19,640戸で95%にあたります。津波による被害を除けば、当面補修をしなくとも居住に支障のない住宅は98%を占めておりました。
関東南部地域は、震度6弱の揺れとなり、天井の崩落や家具の転倒・屋根の破損などが相次ぐ、観測史上最大規模の地震でした。その時、㈱サン勇建設のツーバイフォー工法住宅に住まう方々の意見を次のようにまとめました。
越谷市M様邸 2階出窓の花瓶が倒れなかった。
草加市Y様邸 道路が波打ちマンションが揺れていた。帰宅するとキャスター付きの物入れが動いていただけだった。
足立区O様邸 鉄骨造の職場がすごい状態なので、驚いて帰宅すると何事もなかったかのようだった。
足立区I様邸 喫茶室のグラスや置物が落ちていなかった。いつもの通り平然としていた。
ふじみ野市M様邸 玄関のシャチハタ印すら倒れていなかったので驚いた。
等々、地震による不具合は1件もありませんでした。
<気密性>
環境省では、ZEH「快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備による省エネとエネルギーを創る事で住宅エネルギー量がゼロ以下になる住宅」を推進しています。
その為、気密性を上げるために各種建材に工夫が付加されていますが、ツーバイフォー工法はもともと気密性の良い工法なので、高気密・高断熱仕様にするためのコストが、他の工法と比べて少ないのも人気の秘密です。つまり高気密・高断熱のコストパフォーマンスがとても良いのです。
<耐風性>
2013年9月埼玉県越谷市に竜巻が発生しました。
その際に無傷だったのはツーバイフォー工法でした。
大型台風が関東に接近した時も、突風で家が揺れることなどはとても少なく、被害報告も少ないのもツーバイフォー工法の特徴です。
<耐火性>
ツーバイフォー工法自体が火災に強く、延焼しにくいので、ツーバイフォー工法は木造でありながら火災保険料率が鉄骨住宅や鉄筋住宅と同じ料率(一般木造住宅の1/2位)だという事も、人気の一つです。
更にツーバイフォー工法は、2015年に2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得し、木造建築でありながら、防火地域でも100㎡以上の住宅や階数が5以上の建築物の建設が可能になりました。ここでも耐火性が証明されています。
火災事故で実証された例が(社)ツーバイフォー協会HPで紹介されています。
サン勇建設のお客様の災害事例でも、耐火性が解ります。
1995年千葉市U様邸 新築して3か月目に隣家から失火し全焼するほどの火災にあいました。ペアガラスがひびが入り、干していた布団と外壁のサイディングが焦げる被害がありましたが、それらを補修し現在に至ります。
2014年草加市I様 築15年が過ぎた時に隣家から失火。全焼するほどの火災にあいました。外壁が焦げ、雨どいが解けて、消火活動によってガラスが一枚割れました。ガラスが割れたために煙とすすが入ったために内装の一部も補修しました。
<耐久性>
ツーバイフォー工法の構造建材は、日本農林規格等に関する法律に基ずく、厳しいJAS規格認定のものしか使いません。
そうしたことが耐久性にもつながり、適正なメンテナンスをすることで大磯迎賓館のように100年を超えるほどの雄姿を残すことになります。
長持ちする住宅を建築するという事は「環境への配慮」にもつながっていくのではないでしょうか。
<コストパフォーマンス>
ツーバイフォー工法が日本で一般化された1973年は360円/1ドルでしたので、輸入建材を使用するツーバイフォー工法は当時、鉄骨住宅より高価な木造住宅でした。
大磯迎賓館を建設された建築士・小笹三郎氏は、その61年前にツーバイフォーを住宅では日本で初めて建設されるときには、法外な資金を投じた事でしょう。しかし、完成から11年後の関東大震災で無傷だった事で、信念が正しかったことに安堵されたのではないかと思います。
現在、ツーバイフォー工法は、円高が進み高性能の割にお手頃になりました。木造軸組工法をツーバイフォー工法の基準の準耐火にする方が高価になってしまうくらいです。
更に、ツーバイフォー工法は構造自体に断熱性があるので、高価な断熱材を採用しなくても温熱環境が整います。したがって、ツーバイフォー工法の内装に自然素材を使う事で、五感に働く更なる居住性UPが期待できます。