コロナ渦での映画”三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実”
三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実ポスター
コロナ直前の公開された実録映像の映画ですが、公開直後映画館が営業自粛のため中断してしまいました。6月の映画館再開から改めて公開されていましたので見ることができましたが、映画館への入館から体温測定、手指消毒、マスク着用などチェックを受けての、ものものしい入館が皮肉にもこの映画の臨場感を増すような効果となっていました。
映画は写真にもある通り、1969年5月13日 東大駒場900番教室でのあり得ない討論会の様子を撮影した映像を中心とした内容となっています。 当時三島は右翼的思想を持つ作家と思われていたとともに、一方ではノーベル文学賞候補と云われていた小説家ですが、この”三島由紀夫”が革命思想を持つ東大全共闘に論戦を挑まれ、その真っただ中の駒場900教室で、云わば敵陣のまんまん中で討論をするというスリリングな実録映像となっています。東大全共闘の学生たちは意気盛んで頭脳明晰な学生たちです。これに真っ向対立するだろうと目されていた三島でしたが、案にはからずや柔和な雰囲気の話ぶりで、東大全共闘と向いている方向は同じだという論調で、論戦というより説得するといったスタイルで、これが意外で興味深く感じました。敗戦以来の欧米の高圧的影響下からの脱却、そして独立国家としての文化や文明の独自性を堅持することこそが三島の目的ではなかったのではと感じました。 三島由紀夫の思想の根底にあるのはこの日本文化にある”美”を守るための闘いであったのかもしれません。そして市谷での最期のアジテーション、割腹自殺へ。身を持っての警鐘だったのかもしれません。
映画の60年代当時の大学はどこも学生運動が盛んとなり”全学連”、”全共闘”、”中核派”、"革マル派”などなど、そして”連合赤軍”浅間山荘事件、内ゲバと過激さを増しやがて終息していきます。この当時の大学はロックアウトで勉強などできなかったようです。現在のコロナのロッダウンやロックアウトと偶然の符合に因縁を感じます。
三島由紀夫に興味のある方、そして60年安保闘争の時代に興味のある方はこの映画をご覧頂ければ時代性が垣間見れると思います。ちなみにナレーターが”東出昌大”さんというのも興味深く思いました。
また小説家”三島由紀夫”の作品も”金閣寺”、イギリスで映画化された”午後の曳航”などの文学作品から、”永すぎた春”などのポップな小説や、”美しい星”などのSF小説・戯曲まで、幅広いジャンルの作品がありますので、一読してみてはいかがでしょうか?