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空気改善で喘息の症状が軽くなる?その理由4つと対策を分かりやすく解説

2021/06/20(日) 健康と住宅の関係

空気改善で喘息の症状が軽くなる?その理由4つと対策を分かりやすく解説

空気改善で喘息の症状が軽くなる?その理由4つと対策を分かりやすく解説

世界の5大呼吸器疾患のひとつに数えられ、世界中で3億人以上(世界保健機関(WHO)調べ)の人が罹患しているといわれる気管支喘息(以下喘息)。気管支の慢性的な炎症によって咳・たん・喘鳴(ぜんめい)などの症状があらわれる病気で、日本全国での推定患者数も120万人超(2017年厚生労働省患者調査)と最も一般的な慢性呼吸器疾患です。

喘息をコントロールするために重要なのは予防(発症予防と増悪予防)と治療(長期治療薬と発作治療薬による薬物治療)。日常生活に支障をきたさないためには、医師の指示に従って処方された薬の服用(治療)を続けることはもちろん、環境や生活習慣を改善して発作が起きにくくしたり悪化しないようにする(予防)ことが重要です。喘息は、環境調整と自己管理によって良くも悪くも転ぶ病気なのです。環境整備によって症状が軽くなれば、薬の服用量を減らせることも少なくありません。

喘息を発症すると、発作が起きていない時も常に気管支に炎症が残り続けて刺激に敏感になってしまうため、できるだけ気管支に刺激を与えない生活をしなければなりません。人間が生きていく上で最も多く体内に取り込んでいるものは何だと思いますか?−−答えは「空気」です。つまり空気中の刺激物質を減らせば、それだけ体内に取り込まれる刺激物質も少なくなるということです。

そこで、今回は空気が喘息に与える影響に注目して、「乾燥」「寒暖差」「ダニ」「有害化学物質」の4つの点から、気道になるべく刺激を与えない室内空気の作り方や刺激物質の避け方を解説していきます。

※関連記事:気管支喘息の症状・原因・対策を徹底解説!何歳でも発症のリスクあり

 

喘息と空気

人間は多くの物質を呼吸によって体内に取り込んでいます。東京大学名誉教授の村上周三工学博士の論文によると、人は83%の物質を口や鼻から吸い込んでいます。飲み物(8%)、食べ物(7%)と比べると、いかに多くのものを空気から摂取しているかイメージできるでしょう。呼吸によって取り込んでいる物質中56%と最も大きな比重を占めるのが「室内空気」、つまり自宅や職場の空気なのです。

 人体の物質摂取量

比重から考えても、空気対策が喘息予防の最重要ポイントといっていいでしょう。室内の空気をクリーンかつ適切に保つことは、喘息だけでなく他のアレルギー性疾患の予防にも役立ちます。

 

喘息と乾燥の関係

アレルゲンやその他の刺激物質をできるだけ取り除くことが空気対策の基本となりますが、喘息の場合は空気の乾燥と温度にも気を配る必要があります。それはなぜでしょうか?理由は2つ、空気が乾燥すると喉や気管支の潤いがなくなるため、そして呼吸器感染症にかかりやすくなるためです。

 

喉や気管支の乾燥

カラカラな空気は喉や気管支の潤いを失わせ、咳やたんが出やすくなります。また、乾燥していると出たたんは固まりやすく詰まりやすくなります。つまり、ただでさえ狭くなっている気道が物理的にさらに狭くなり、喘息の悪化をまねいてしまうのです。

 

感染症

喘息発症や悪化の一因といわれる呼吸器感染症は、おもにウィルス感染によって起こります。風邪の約80〜90%がウィルス感染によるもので、その種類は200以上といわれています。厚生労働省の建築物衛生管理検討会報告書(2002年)では、気道粘膜が乾燥していると気道の細菌感染予防作用が弱まるためインフルエンザにかかりやすくなると警告されています。また、風邪やインフルエンザの原因ウィルスは低温・低湿度環境でより長く生存し、乾燥しているとウィルスの飛沫も遠くまで飛んでいくので感染しやすくなります。

では、どのくらいの湿度・温度がウィルス感染症予防に最適なのでしょうか?G・J・ハーパー氏は、論文の中で「湿度50%以上、温度20℃以上」でインフルエンザウィルスの空気中での感染力が下がることを報告しています。湿度が70%を超えるとカビやダニが繁殖しやすくなるため、「湿度50〜60%、温度20℃以上」が最適かつ快適な温湿度といえます。

インフルエンザウィルス生存率

乾燥対策

快適な温湿度を保つためにエアコンや加湿器を使うのが手っ取り早い方法ですが、常に乾燥やカビ・ダニの繁殖と隣り合わせなのがデメリット。そこで注目したいのが、「調湿効果」と「断熱性」を持つ自然素材=木を家の素材に使う方法です。もみの木を含む針葉樹は調湿効果が高く、家の内装材として使用した際に湿度を50〜60℃と最適に保ってくれます。また、木はコンクリートの約10倍、鉄の約840倍と他の建築素材と比べて熱伝導率が低く断熱性に優れているので、室内の温度管理にも適しています。

 

喘息と寒暖差の関係

冷たすぎる空気や急な寒暖差は、喘息の症状を悪化させることが知られています。夜間や早朝、春先や秋口に悪化を訴える患者が多いのはこのせいです。

昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科のアンケート調査では、「喘息コントロールを悪化させる特定の季候がある」と答えた患者は70.5%、具体的な季候として「秋の冷え込み」をあげる患者が最も多く(49%)、次いで「梅雨」(32%)、「冬の寒さ」(29%)が上位であったことが示されています。

 喘息悪化の季候変化

 

寒暖差対策

外出時は服を重ね着して身体の冷えを防ぐ、マスクを着用して気道に冷たい空気が直接入るのを避ける、家の中と外の温度差を5℃以内に保つ、などがすぐにできる対策になります。

また、前項で温湿度対策に適している建材にあげた木は高い断熱性を持っているため、家の中の冷えを防ぐという点でも理想的な素材です。木は多くの空気を含んでいるため外気の影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は暖かい快適な室温を保ってくれるのです。木材、ビニールタイル、コンクリートの異なる床材で足の甲の皮膚の温度変化を測定した実験では、木材が最も冷えが少なかったという結果が出ています。

足の甲の温度変化(資料:山本孝 他「木材工業」Vol.22-1.P24,1967)
林野庁ホームページより

 

喘息とダニの関係

アトピー型喘息のアレルゲンとして筆頭にあげられるのが、ダニです。中でも問題になるのは、チリダニ科ヒョウダニ属のコナヒョウダニとヤケヒョウダニの2種で、おもにホコリ、カビ、人のフケやあか、食べ物のくずなどをエサとします。生きているダニだけでなく、空気中に舞ったダニのフンや死骸を吸い込むことでも喘息が悪化するため、「繁殖を抑える」ことと「フンや死骸を除去する」対策を並行して行う必要があります。

 

ダニの繁殖を抑える

生きているダニを増やさないために、

  1. ダニの住処を減らす
  2. ダニが住みづらい環境にする

ことを意識して家の中をチェックしてみましょう。ダニが多い場所は布団、カーペット、布製ソファー、クッション、ぬいぐるみなどです。ダニの住処を減らすためには、ダニの温床であるカーペットや畳をフローリングに変えること、布製のソファ・クッション・ぬいぐるみを置かないこと、などの対策が効果的です。

ダニが繁殖しやすい環境(温度20〜30℃、湿度50〜70℃)は人間にとっても快適なので、ダニが住みづらい環境作りはなかなか難しいのですが、 頻繁に掃除機がけや換気を行ってダニのエサとなるものを取り除くことで繁殖を抑えることができます。湿度70℃前後から増えるカビはダニのエサになるので、湿度を適切に保つことがダニ対策にもつながります。

木の放散成分が持つダニの行動抑制効果を利用して、ダニが繁殖しづらい環境を作ることもできます。農林水産省森林総合研究所森林化学科長谷田貝光克氏の論文では、床を畳やカーペットから木の床に改装すると改装前に比べてダニ数が激減したと報告されています。ダニのすみかがなくなったという物理的要因だけではなく、ダニの繁殖を抑制する木の成分の作用によるものです。

また、東京大学農学博士の平松靖氏は、木材から直接発散される物質のダニ行動抑制効果によってダニの繁殖機会が減った結果、屋内のダニ数やアレルゲン量が減少したと論文で結論づけています。実験でダニの行動抑制効果が認められたテルペン類は「ヒノキ」や「もみ」に多く含まれており、特に自然乾燥の場合は樹齢に比例して効果が持続するといわれています。

 

ダニのフンや死骸を除去する

空気中や床の上のダニアレルゲンを減らすための最も有効な対策は、掃除です。特にダニが一番多く生息するといわれる布団は、天日干しで乾燥させたあとに掃除機で死骸を吸い取ったり、定期的な丸洗いでダニの繁殖を防ぐことができます。ダニタンパクは水溶性なので、1回の丸洗いで約90%の除去が期待できるといわれています。殺チリダニの目安は50℃、20分といわれていますので、布団乾燥機も活用するとよいでしょう。

空気清浄機を使うこともひとつの対処ですが、空中に浮遊しているものしか取り除くことができません。空中のホコリやアレルゲンは約1時間すると床に落ちるので、床の水拭き掃除も欠かせません。カーペットや畳よりもフローリングの方がメンテナンスしやすく、防ダニの観点から見てもベターな床材といえるでしょう。また、ハウスダストや、ダニのエサになるカビ防止のためにも、定期的な換気を常に心がける必要があります。

 

喘息と有害化学物質の関係

喘息に悪影響を与える有害化学物質として名前があがるのが、タバコの煙と大気汚染物質です。いずれも生活の中で無意識に吸い込んでいる物質なので、意識して遠ざけなければなりません。特に家の中は長い時間を過ごす場所ですので、できる限りこれらが発生しない環境作りが重要です。

 

タバコの煙

喫煙者が吸い込む主流煙だけでなく、吐き出された呼出煙や副流煙にもニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が大量に含まれていますので、喘息患者本人はもちろん、家族も絶対にやめるべき習慣です。タバコの煙は気道の上皮粘膜を傷付け、喘息症状を悪化させてしまいます。気道に刺激を与えるだけでなく、喘息の治療薬の効果を弱めてしまうことも分かっています。

最近流行りの加熱式タバコはどうなのかという点ですが、紙巻きタバコと同様に主流煙に一酸化炭素・アンモニア・ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・粉じんが、副流煙にホルムアルデヒド・粉じんが発散されていたと報告されており(和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科の川村晃右氏らの研究)、加熱式タバコに変えることが対策にはなりえません。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは喘息やシックハウス症候群を誘発するだけでなく、発がん性も指摘されているので、自分と家族の健康を守るためにも喫煙しないことが望ましいのは明らかです。

 

大気汚染物質

喘息症状に影響を与える大気汚染物質として指摘されているのが、二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、浮遊粒子状物質(SPM)です。二酸化硫黄、オゾンなどは最近減少してきていますが、二酸化窒素(NO2)と浮遊粒子状物質(SPM)は未だ自動車の排気ガスなどに多く含まれています。

SPMの中でも近年問題になっている微小粒子状物質(PM2.5)は、髪の毛の太さの30分の1(直径2.5㎛)以下と非常に小さく、吸い込むと細い気管支や肺の奥まで達してアレルギー反応を引き起こすと考えられています。
※参考:環境再生保全機構ホームページ

国立療養所南福岡病院臨床研究部小田嶋博氏らは論文で、0〜6歳の低年齢の喘息患者において、空気中の二酸化窒素(NO2)とSPMの濃度が高くなると喘息発作入院患者数が増えるという相関性が認められたと報告しています。また、米デューク大学地球環境保健学教授のJunfeng Zhang氏らは、寝室のPM2.5を除去すると喘息を持つ子供の呼吸が有意に改善するとの研究結果を発表しています。

大気汚染注意報が出ている時は外出を控えたり、マスクやゴーグルをするなどの対策を取りましょう。屋内のPM2.5汚染源として気をつけるべきはタバコの煙で、環境再生保全機構は「屋内や車内で喫煙すると、中国・北京の最悪汚染時に匹敵する濃度になるともある」と警鐘を鳴らしています。屋内でタバコを吸わないことは大前提として、PM2.5除去性能を備えた空気清浄機を使うなどの対策も検討してみてください。

 タバコの煙_pm25
(出典:環境再生保全機構ホームページ

家の建材に木材を使うことも、屋内空気をクリーンに保つためのひとつの手段です。伐採された木材でも優れた浄化機能を持つことは、歴史的な建造物が証明しています。東大寺正倉院で1250年間もの間文化財が良好に保管されてきたのは、木造建造物内部では温度・湿度が一定に保たれ、二酸化窒素(NO2)・二酸化硫黄(SO2)・オゾン(O3)などが外気よりも70〜90%減少するためだと考えられています。
※参考:大阪環境農林水産研究所研究報告第1号(2008年)(辻野喜夫氏ら)

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