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素材えらびがカギ!家づくりでアトピー性皮膚炎を防ぐには

2021/04/11(日) アレルギーと住宅

素材えらびがカギ!家づくりでアトピー性皮膚炎を防ぐには

素材えらびがカギ!家づくりでアトピー性皮膚炎を防ぐには

近年日本で急増しているアトピー性(アレルギー)疾患。かゆみを伴う湿疹が広がり良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚炎で、発症と悪化の原因には「遺伝要因」と「環境要因」があることが知られています。遺伝要因(=体質)を排除することは難しいですが、環境要因、つまりダニやハウスダスト、化学物質、食生活などのわたしたちをとりまく環境は人の手で改善することができるものです。

特に1日の大半を過ごす家の中の環境は、アレルギーの発症と悪化に大きな影響力を持ちます。しかしダニやハウスダスト、化学物質は目に見えない分、実感が少なく対策しづらいのが現実です。そこで今回のコラムでは、手間と時間をかけずに環境要因を排除するにはどうしたらいいのか、アトピー性皮膚炎の発症や悪化を抑えるための家の素材選びを考えます。

 

アトピー性皮膚炎とは?その症状と現状

アトピー性皮膚炎とは、赤くなる、皮がカサカサむける、などのかゆみのある湿疹を伴う皮膚疾患で、以下ような特徴があります(日本皮膚科学会ガイドライン ※PDFより)。

  • 良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す
  • 患者の多くはアトピー素因(体質)を持つ
  • 年齢により湿疹があらわれる部位が異なる
  • 乳児期か幼児期に発症する
  • 小児期に治ることもあるが症状が成人まで続く場合もある

アトピー性皮膚炎を発症すると皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激が簡単に皮膚の中に入ってきてしまうためアレルギー性の炎症が起こります。アトピー性皮膚炎が乳児に多いのは、皮膚の機能がまだ完全に発達しておらず、大人と比べてバリア機能に異常をきたしやすいためです。

 独立行政法人環境再生保全機構「小児アトピー性皮膚炎ハンドブック」(PDF)

 ※出典:独立行政法人環境再生保全機構「小児アトピー性皮膚炎ハンドブック」(PDF)

急増する患者数

厚生労働省の「患者調査」によると、2008年から2017年の10年間でアトピー性皮膚炎の患者数は34.9万人から51.3万人と16.4万人増加、30年前(1987年)と比較すると実に2倍以上に増えています。

 

 ※厚生労働省「平成29年 患者調査(傷病分類編)」をもとに作成

 

アトピー性皮膚炎が増えているのはなぜ?住まいにできること

では、アトピー性皮膚炎が近年急増しているのはなぜでしょうか?冒頭であげたとおり、アトピー性皮膚炎の発症・悪化の原因には「遺伝要因」と「環境要因」があります。国立環境研究所生体影響評価研究室の井上健一郎室長は、急増の背景には 遺伝要因よりも環境要因が大きく関係していると考察しています。遺伝要因(アトピー素因)には家族の既往歴と、IgE抗体と呼ばれるアレルギーに関わるタンパク質を体内で作りやすいかかどうかが関係しますが、人間の遺伝子は何万年もかかって変化するものなので、近年になって増えた病気は遺伝とは別の影響、つまり「環境要因」が大きいと考えられるのです。

  • 遺伝要因(アトピー素因)

           ┗ 家族歴、体質

  • 環境要因

         ┠ アレルギー的因子(アレルゲン)

              〔ダニ・ハウスダスト、花粉、ペットのフケ、化学物質、食べ物など〕

         ┗ 非アレルギー的因子〔汗、乾燥、ひっかき、ストレスなど〕

環境要因1:化学物質

環境要因は何かひとつではなく様々な要因が重なり合って起こるケースが多くみられます。代表的なものとしてよくあげられるのは、ダニや花粉、汗、ペット、ストレスなどですが、井上室長が環境要因に含まれる重要な因子の1つとして提唱しているのが、空気中や食品に含まれる「化学物質」です。

建材や家具に使われるホルムアルデヒドやトルエンなど、空気中に存在している化学物質は呼吸により定常的に体内に取り込まれています。さらに食品添加物や着色料、防腐剤など、食事を取るたびに摂取している化学物質も増えています。

普段生活している家の中に目を向けてみると、厚生労働省が室内濃度指針値を指定している揮発性有機化合物(VOC)14物質だけでもわたしたちの身近にあふれていることが分かります。

 

このアレルゲンである化学物質を排除する目的に大きく寄与してくれるのが木の住宅です。自然素材を使った住宅はアレルゲンとなる化学物質を使用していない・使用が抑えられているため、空気中に放出される有害物質が少なくなるのです。

空気中の化学物質で最も影響が出やすく、建材や接着剤など住宅を構成するあらゆる部門で使われているホルムアルデヒドを例にとりましょう。厚生労働省の屋内濃度指針値(2019年)である0.08ppmは、過敏な人でなくても臭いを感じる程度といわれています。あくまで指針値であり規制ではないため、触れない・吸わないためには家主自身がホルムアルデヒドを使っている建材を意識的に遠ざける必要があります。

また、木材は化学物質を吸着・除去する効果も持っています。この効果を持つ自然素材のひとつである「もみ」の葉は、ホルムアルデヒド除去率に関して高い数値を記録していることが発表されており(国立研究開発法人の大平辰郎氏による研究)、アレルゲン排除の観点からも非常に優秀な素材であるといえます。

 

環境要因2:ダニ

アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンとして真っ先に名前があがるのはチリダニ(ヒョウダニ)です。日本の住宅ではダニは床面、特に畳やカーペットに多く生息しています。そのため、ダニ数を減らすには床材をフローリングにすることが最も有効かつ理想的な方法です。掃除がしやすいだけでなく、木材の持つ抗菌作用がダニの発生・繁殖を防いでくれるのです。フローリングの素材には、前項目で指摘した化学物質を避けるため、合板ではなく100%自然素材でできている無垢材を採用するのがベストでしょう。

農林水産省森林総合研究所森林化学科長谷田貝光克氏の論文では、抗菌作用の強い木材はダニのエサとなるカビの繁殖を抑えることが可能であり、床を畳やカーペットから木の床に改装すると改装前に比べてダニ数が激減したと報告されています。カーペットなどのダニのすみかがなくなった物理的要因だけではなく、ダニの繁殖を抑制する木の成分の作用によるものです。

また、東京大学農学博士の平松靖氏は、住宅や家具によく用いられる木材チップを使った環境下でヤケヒョウダニの行動を観察。木材から直接発散される物質のダニ行動抑制効果によってダニの繁殖機会が減った結果、屋内のダニ数やアレルゲン量が減少したと論文で結論づけています。実験でダニの行動抑制効果が認められたテルペン類は「ヒノキ」や「もみ」に多く含まれており、特に自然乾燥の場合は樹齢に比例して効果が持続するといわれています。

環境要因3:乾燥

中部大学応用生物学部環境生物科学科の須藤千春氏は、アトピー性皮膚炎の発症と悪化には、ダニなどのアレルゲンに対するアレルギー炎症反応のほかに、皮膚の乾燥が大きく関係していると指摘しています。アトピー性皮膚炎患者の家の温度・湿度、皮膚水分量と症状の出方を調べた同氏の研究では、室内湿度の低下が皮膚水分量の低下につながり、症状の悪化をまねくと結論づけられています。

患者宅の温湿度、皮膚水分量と症状スコア(例)

 

※出典: 認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク

上のグラフを見ると、皮膚水分量に反比例して症状スコアが夏に低く秋から顕著に高くなっていることが分かります。これは秋冬から春先にかけての暖房使用が室内湿度の低下をまねいているためと考えられます。

アトピー性皮膚炎の大敵である乾燥をどう防ぐか。ここでも注目すべきは木材の「調湿効果」です。もみの木を含む針葉樹は調湿効果が高く、内装材として使用した際に湿度を50〜60%と最適に保ってくれるため、アトピー性皮膚炎対策としても最適な素材といえるでしょう。モミの木を使った結露実験では、ナラやベニヤ材に比べて高い調湿効果を証明しています。

屋内湿度が70%以上になると、ダニのエサとなるカビが繁殖しやすくなるので注意が必要です。カビ予防の観点からも発生源となる畳やカーペットは避けたい床材なので、無垢材フローリングを検討してみてください。

 

まとめ

アトピー性皮膚炎の発症や悪化をまねく環境要因を遠ざけるためのポイントは「アレルゲンの排除」と「屋内空気環境の改善」の2つです。

  1. アレルゲンを排除する
    • 化学物質を避ける
    • ダニを発生させない
    • ダニのエサとなる屋内のカビを防ぐ
  2. 屋内空気環境を改善する
    • 室内の湿度を最適に保つ
    • こまめに掃除、換気する

どんなに気をつけていてもアレルゲンとの接触をゼロにすることは困難なのが現代社会ですが、アレルギー性疾患は、人生の大半の時間を過ごす住宅の建材や内装材に自然素材を選ぶだけでも大きな改善が見込める部分です。アレルゲンがたまる床面に近い場所で生活する赤ちゃんや小さいお子さんがいるご家庭は特に、工務店やハウスメーカーと相談しながら素材選びにこだわってみてください。

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