新築マンションに自然素材が使われない業界の裏に隠されるその理由とは?
新築マンションに自然素材が使われない業界の裏に隠されるその理由とは?
写真:自然素材を導入した当社お客様 S様宅
家の素材が原因で、居住者がシックハウス症候群や化学物質過敏症といった体調不良を訴える件数がピークに達してから約30年が経過した今も、まだ室内に充満するホルムアルデヒドを中心とした化学物質により、アトピー性皮膚炎や気管支喘息のような身近な病気まで誘発してしまう住宅は数多く存在します。
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その解決策として建築業界を席巻するのが、古き良き日本の建築に回帰する「自然素材」を活用した家づくり。しかし、注文住宅であれば無垢材・珪藻土・漆喰といったいわゆる天然の素材を使うことは容易いですが、マンションとなると実は話が一変します。
共有部分の管理の楽さ、駅近の物件数という観点からマンション購入にもメリットはありますが、立地や設備、予算といった希望を網羅しつつ "自然素材" という条件項目にチェックを入れると、好みの新築マンションを見つけるハードルは急に高くなります。
そこで今回の記事では、なぜ新築マンションに自然素材が使われないのか、自然素材の家がほしい場合、マンションにすべきなのか、新築戸建てにすべきなのかを解説します。
自然素材はマンションディベロッパーには都合が悪い
マンションディベロッパーは原則として3Pを主軸として建築物を企画します。
「駅からの距離(プレイス)」、「広さ(プラン)」、「価格(プライス)」
悲しいことにこの3Pの中には内装材が含まれていない、つまり居住者の健康面への配慮が欠けてしまっているのです。当然、敢えて健康被害を及ぼすような素材が使われることはありませんが、ディベロッパーもビジネスとしてマンションを企画しているため、彼らにとって許容範囲の見栄えと質を確保できていれば、少しでも利益率を高めるために3P以外の要素が疎かにされてしまうのです。
新建材の何が悪いのか?
そもそも新建材の定義からおさらいしましょう。ブリタニカ国際大百科事典には次のように記されています。
新しい素材や技術を用いて作り出された建築材料
新しい素材は多岐に渡りますが、プラスチック・塩化ビニル・ポリエステル・鉄・コンクリートなどが例として挙げられます。ここまでくればピンとくる方もいるかもしれませんが、このような素材には化学物質が含まれており、空気中に蒸発したものを人が吸い込むと、体調不良を引き起こします。
安価で、品質にバラつきがなく、施工も簡単という強みがある反面、健康被害の声も少なくなく、そのため自然素材のニーズが高まっているのです。
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自然素材のメリット
自然素材と一口に言っても、無垢材・珪藻土・漆喰、その他にも様々な素材があります。それぞれ特徴は異なりますが、総じて次のようなメリットがあります。
- ダニやカビが繁殖しにくい
- 夏に涼しく冬に暖かい
- ホコリが溜まりづらい
- 室内干しできる
- ゴキブリがいなくなる
- 花粉対策になる
- 喘息やアトピー対策になる
詳しくは、自然素材の家を建てる前に知るべき事実 ― 素材別のメリット・デメリットに譲りますが、新建材と比べ、上記のようなメリットがあるため、子供や家族の生活の質を向上するためにも、家には部分的にでも自然素材を取り入れるのが得策です。
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写真:当社お客様 J様宅
ディベロッパー側のコスト的な負担が大きい
新築マンションに自然素材が使われれない理由の一つが、コスト的な負担です。この理由を理解するには自然素材の特徴を大前提として捉えておく必要があります。
代表的な自然素材の一つ無垢材は、言うなればこの世に二つとして同じものが存在しない素材です。工場で機械的に生産される木材は、規格通りの扱いやすい物。
無垢材はその真逆で、天然であるが故に水分含有率が木材ごとに違っていたり、現場に到着する頃には反ってしまっているものがあるなど、とにかく品質にバラつきがあるのです。
写真:ドイツ産の自然素材もみの木材
そのことで発生する問題が次の三つです。
- 使えない素材が一定数あることを見込んで多めに発注しなければならない
- 調湿性による伸縮を加味するため工期が長くなる
- 傷つきやすく慎重に施工するため工期が長くなる
工期が長くなれば、現場の大工さんたちの人件費がかさむだけでなく、より技術のある大工さんの手が必要になります。マンション建設に慣れている大工は自然素材より新建材を取り扱うケースが多いため、そもそも自然素材の扱い方を知らない人もいます。
そのような職人さんに新しいやり方を一から勉強してもらうのは効率的ではなく、かと言って違う会社にサッと入れ替えられるものでもありません。そうなると、マンションディベロッパーにとっての解決策としてはやはり、新建材を使ってコスパの良い利益を生むマンションを建設すること、に落ち着いてしまいます。
逆に施主側、自然素材の家を建てたい人側の解決策は、「昔から自然素材の家の実績がある工務店」にお願いする、もしくは、「そういった工務店にマンションのリノベーションを依頼する」です。
写真:当社お客様 S様宅
建築業界の仕組み的な足枷
新築マンションに自然素材が使われない最後の理由は、建築業界の仕組みそのものにあります。
そもそも新築マンションの建設には大きく3社が関わっています。企画するディベロッパー、工事をするゼネコン、そして販売する不動産業者です。企画者であるディベロッパーは、内装材に使われる建材の仕様や基準を決めますが、多くの場合、メーカーフリーとなります。
メーカーフリーであるため、ゼネコン側は当然、原価が低く、自分たちが扱いなれたメーカーと品番を選択します。こうなると、特別な指示がない限り「コスト高」かつ「扱いにくい」自然素材を選択する理由はありません。
ディベロッパー側も建築物の責任はゼネコンに取ってほしいため、彼らが選択したメーカーの品番を承認し、実際にそれで着工に進むのです。
結論:自然素材の家を買うなら新築マンションか新築戸建てか
ここまでのポイントをまとめると...
- 新建材は健康に悪く、部分的にでもいいから自然素材は使うべき(自然素材を使うべき箇所について詳しく読む)
- 建築業界の構造上、自然素材の新築マンション物件は多くない
- 職人の技術レベルを考慮すると、自然素材の家の実績が多い工務店で一戸建てを建てるのが賢明
結論として、新築戸建ての方が望み通りの家を手にできる確率が高いと言えます。なぜなら、自然素材を使った新築マンションの数が少ないからです。
希望の間取り、希望の立地、希望の予算で自然素材のマンションを見つけるのが難しい以上、どこかで妥協を強いられる確率が高まります。であれば、好きな場所に土地を購入にし、そこに自然素材を使った新築戸建てを建設する方が得策と考えられるでしょう。
参考文献:
- 木材なんでも小辞典(木質科学研究所)
- 木材機能研究所
- 木材と感性 4.におい感覚と木材(谷田貝光克)
- なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか(著:鈴木雄二ほか)
森のような清浄な空気と、冬でも温かいモミの木のぬくもりを
当社自慢のモデルハウスでご堪能ください。
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