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親のアトピー性皮膚炎は遺伝する?子どもの発症・再発を防ぐには

2021/04/18(日) アトピーと住宅

親のアトピー性皮膚炎は遺伝する?子どもの発症・再発を防ぐには

親のアトピー性皮膚炎は遺伝する?子どもの発症・再発を防ぐには

アトピー性皮膚炎の発症には、遺伝要因(アトピー素因)が大きく影響します。そのため、両親がアトピー疾患を持っている・持っていた場合は子どもも発症する可能性が高いと考えて対策を取っておく必要があります。両親のどちらかがアトピー性皮膚炎の場合、その子どもが同疾患になりやすい体質を受け継いでいる確率は、そうでない人に比べて2倍くらい高くなるというデータもあります。

アトピー性皮膚炎は一旦発症すると短期間で寛解することは難しく、数ヶ月から数年単位で治療し改善していくことが必要な疾患です。そのため、とにかく発症させないこと、また、一度症状がなくなったなら再発を防ぐことが重要となります。

今回のコラムでは、アトピー素因を持っているであろう子どもがアトピー性皮膚炎を発症・再発しないために、親ができる対策や環境面の整え方を紹介します。

 

アトピー性皮膚炎の特徴と発症時期

かゆみを伴う湿疹が広がり、良くなったり悪くなったりを繰り返す症状が特徴的なアトピー性皮膚炎。患者数は約51万人(2017年、厚生労働省による患者調査より)で、ここ30年で2倍以上と近年急増しているアレルギー疾患です。
※アトピー性皮膚炎の詳しい症状や発症原因についてはこちらの記事で紹介しています。

急増の背景には住環境や衛生環境、食生活の変化などの「環境要因」が影響していますが、アトピー性皮膚炎を発症するか否かで大きなカギとなるのは「遺伝要因」(アトピー素因)を持っているかどうかです。 

一般に乳幼児期に発症し、年齢が上がるにつれ患者数が減少するという傾向から、年齢別で見ると乳児期が最も患者数が多くなっています。早ければ生後2カ月頃から発症し、発症年齢が1歳以降になると難治性になる確率は高くなっていきます。

◾️ アトピー性皮膚炎の年齢別有症率
アトピー_年齢別有症率
(調査年度:A 2000-2002年度、B 2006-2008年度厚生労働科学研究)
出典: 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」(PDF)

 

子どもがアトピー持ちになるリスクは2倍

バリア機能の低下による乾燥が外から細菌や刺激などの異物が進入しやすい状態を作り、異物が侵入したことで皮膚の中の免疫細胞が炎症を起こして湿疹やかゆみが出る−−それがアトピー疾患を持つ肌の働きです。このような乾燥した肌になる原因のひとつが両親から受け継がれる「体質」。厚生労働省の資料によると、両親のどちらかがアレルギー(喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)を持っていた場合、生後4ヶ月の乳児がアトピー性皮膚炎を発症するリスクは約2〜4倍、両親ともにアレルギーを持っていた場合は7.5倍にもなります。

アトピーの遺伝リスク

他のアレルギーを誘発?アレルギーマーチとは

以前は食物アレルギーがアトピー性皮膚炎をまねくと考えられていましたが、最近では乳幼児期にアトピー疾患がある場合、成長に伴って食物アレルギーや喘息など他のアレルギー疾患の発症リスクが高くなることが分かってきました。この「アレルギー体質を有するものにおいて、原因(抗原)と発現臓器(疾患)と発症時期を異にしながら気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患が次から次へと出現してくる現象」は「アレルギーマーチ(atopic march)」と呼ばれています(1998年、元日本小児アレルギー学会理事長である小児科医の馬場實氏が提唱)。

つまり、幼い時期に肌の状態を良くしておく、アトピー性皮膚炎があればしっかりと治療しておくことが後々のアレルギー疾患を予防することにつながる可能性が高いのです。

◾️ アレルギーマーチ(イメージ図)
アレルギーマーチ
出典:厚生労働省「 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版、PDF)

 

どうしたら防げる?アトピー性皮膚炎の予防と再発防止

遺伝的要因を改善することは現実問題として難しいですが、親として環境面で対策できることは実はたくさんあります。アトピー疾患への影響が大きいと考えられる、保湿、住居と換気、ダニ、居住地域、ストレス、の5つの側面から見てみましょう。

対策1:新生児期からの保湿

保湿剤によるスキンケアはアトピー性皮膚炎の治療においてとても重要ですが、予防の観点から見てもこまめな保湿は有効であることが報告されています。国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長の大矢幸弘氏らの研究で、新生児期からの保湿剤の塗布によってアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下したことが明らかになりました(2014年、Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に発表)。

同研究は、アトピー性皮膚炎の発症リスクの高い新生児118人(両親もしくは兄弟に少なくとも1人以上のアトピー性皮膚炎の既往歴あり)を対象に、1日1回保湿剤を全身に塗布するように指導したグループA(59人)と、乾燥した局所のみワセリンを塗布したグループB(59人)のアトピー性皮膚炎の累積発症率を比較したもの。生後32週目における発症者数はグループAが19人(32%)、グループBが28人(47%)となり、保湿を行ったグループの発症率が約34%低く抑えられるという結果になりました。つまり、新生児期から毎日1回以上の保湿を行うことで、遺伝的リスクの高い子どもであってもアトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性が高いということです。

また、保湿剤でのスキンケアの他に、屋内の湿度を適度に保つことも親としてでできる重要なケアのひとつです。加湿機による強制的な加湿はもちろん、家や家具に使われている木材の放湿性を利用するのも、急激な湿度変化を防ぎつつ湿度を保つ良い方法です。外気の湿度変化と比べ、木材内装の部屋では木の「吸放湿作用」によってほぼ湿度が変化しないことが実験で示されています(下図参照)。

調湿力が高い木材
出典: 林野庁Webサイト

対策2:住宅構造と換気

積極的な換気を行い定期的に部屋中の空気を入れ替えることは、湿気・ダニ・カビ・ハウスダスト・化学物質など、アトピー性皮膚炎のみならずアレルギー全般の発症要因となる物質を除去するのに有効な方法です。ここに大きく関わってくるのが住宅構造と換気であることが、ある調査により示されています。

アトピー性皮膚炎と家庭環境の関連性を調査した研究(1992年、名古屋市)では、鉄筋コンクリート(鉄骨)住宅住まいの子どもに明らかにアトピーの有症が多いという結果を得たと報告されています。

同研究は、名古屋市内の幼稚園児250名に行ったアンケート調査(回答人数221名)を元にしたもので、アレルギー専門医の検診でアトピー性皮膚炎と診断されたのは21.7%(48名)。アトピー有症児の住環境について建築構造を調べると、「木造」が5名に対し「鉄筋・鉄骨構造住宅」が43名で、鉄筋コンクリート(鉄骨)住宅住まいの園児が有症児数の90%を占めていることが明らかになりました。

また、屋外に換気筒のある暖房器具(セントラルヒーティングやエアコン)を使用している家庭で、木造住まいの園児の有症率が5%に対し、鉄筋コンクリート(鉄骨)住宅住まいの園児は20%と有意にアトピー性皮膚炎が多いという結果が出ています。屋外に換気筒のある暖房器具は二酸化炭素や(CO2)窒素酸化物(NOx)の発生が少ないため、窓を開けての換気頻度が落ちてしまい、部屋の空気の淀みにつながる危険があります。

では、なぜ木造住宅住まいの園児においてアトピー有症児が有意に少なかったのでしょうか?その理由として考えられるのは、木造住宅は木材の収縮によるわずかな隙間からの空気の流れで自然換気がなされていること。逆に鉄筋コンクリート(鉄骨)で高気密・高断熱の家の場合、窓開けや換気扇を使っての換気を行わないと部屋の空気の質が下がることを示しています。

また、木の大気浄化機能によって有害化学物質や二酸化窒素の除去が行われ、空気がクリーンに保たれたことも一因といえるでしょう。伐採された木材でも優れた浄化機能を持つことは、歴史的な建造物が証明しています。東大寺正倉院で1250年間もの間文化財が良好に保管されてきたのは、木造建造物内部では温度・湿度が一定に保たれ、二酸化窒素(No2)・二酸化硫黄(SO2)・オゾン(O3)などが外気よりも70〜90%減少するためだと考えられています。 

木材の他にも大気浄化機能を持つ自然の建材はいくつもありますし、自然素材は屋内空気を汚染する化学物質自体を含まない・発生させないので、設計の際に壁や床などの建材に自然素材を選ぶことでより理想的な屋内空気環境を実現できるでしょう。

対策3:ダニ対策

ダニ対策でポイントとなるのは、適切な温湿度、換気、掃除、の3点です。

温度15〜28度・湿度70〜95%で好湿性のカビが、温度20〜25度・湿度75%前後で好乾性のカビやダニが繁殖するといわれています。カビは健康に悪影響を及ぼすだけでなく、ダニのエサとなって繁殖を助長するので、カビ対策とダニ対策はセットで考えなければなりません。ダニが好む温度と人間が快適な温度(17〜28度)は重複しているため温度調節で対策を取るのは難しいですが、湿度に関しては70%を超えないことが鉄則です。反対に、乾燥しすぎもアトピー性皮膚炎の大敵。日本アトピー協会は、「夏冬にかかわらず40〜60%の湿度維持」が目安としています。

家の中の温度が一定になるように管理すると、各部屋の温度差による結露を防ぎカビの繁殖を抑えることができます。屋内に洗濯物を干さない、観葉植物を置かない、戸外に排気筒のない暖房器具(石油・ガスストーブなど)の利用を避けるなどの対策で、屋内で発生する水蒸気を増やさないようにしましょう。

窓を開けて空気を入れ替える自然換気、換気扇やエアコンを使った強制換気は、少なくとも1時間に1回行うことが推奨されています。換気はカビの発生を抑える役割もあります。

掃除に関しては、1日1回の掃除機がけが推奨されています。空気清浄機を利用して屋内空気中のアレルゲンを少なくすることもダニ対策に有効です。

ここでも大きな解決策となってくれるのが、木材の「吸放湿作用」と「防ダニ効果」です。もみの木を含む針葉樹は調湿効果が高く、内装材として使用した際に湿度を50〜60%と最適に保ってくれるため、アトピー性皮膚炎対策としても最適な素材といえます。床面はダニが生息しやすい畳やカーペットを避け、フローリングを選択するのが理想です。その際、無垢材フローリングを選択すると、アトピー性皮膚炎やその他のアレルギーの原因となる化学物質を避けることができます。また、「ヒノキ」や「もみ」に多く含まれているテルペン類はダニの行動抑制効果が認められており、ダニの繁殖を抑えてアレルゲン量を減少させる効果があります。
※ダニ対策については こちらの記事でも紹介していますので、参考にしてください。

対策4:住む地域

居住地域とアトピー性皮膚炎罹患率の関連性は科学的に証明されていませんが、都会化した乾燥しやすい現代の環境がアトピー性皮膚炎増加の要因のひとつといわれています。アトピー性皮膚炎だけでなく、喘息や花粉症など他のアレルギーの発症を防ぐためにも、屋外化学物質への接触はできる限り減らすことが大切です。工業地帯や交通量の多い道路沿いなど、水質・大気・土壌汚染が心配される地域に住むのは避けた方がよいでしょう。

対策5:ストレスを減らす

アトピー性皮膚炎の悪化や再発には、心理的ストレスが大きく影響している場合も少なくないといわれています。子どもはストレスがあっても自覚していないことが多いので、親が適切に対応してあげることが重要になります。

ストレスの元凶を取り除くことが最優先ですが、住まいを見直して子どもが安らげる空間を作ってあげることも悪化や再発防止に役立ちます。木々が放出する「フィトンチット」という香り成分は、ストレスを軽減しリラックス効果がもたらすことが分かっています。森林浴をするとリラックスして爽やかな気分になるのは、木々が放出するこの香り成分の働きによるものです。フィトンチットは本来、有害な細菌や昆虫からの自己防衛のために植物が作り出した物質で、抗菌・防虫・消臭などの効果もあります。木材に加工されても効果が持続するので、家のカビやダニ対策にも大きな助けになってくれます。

フィトンチットがもたらす効果

  • ストレス軽減
  • リラックス効果
  • 免疫機能の向上
  • 消臭効果
  • 防虫効果

 

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