森林浴効果と免疫力の関係性:効果を自宅で再現するには?
森林浴効果と免疫力の関係性:効果を自宅で再現するには?
1980年代にその言葉が生まれてから、2021年現在に至るまで安定した人気を誇る森林浴。ただ単に気分転換になるというだけではなく、感染のリスクが低いという安全面の観点、そして健康を促進するという観点、この2つの要素が森林浴が愛され続ける人気で秘訣です。
今回のコラムでは健康促進、特に免疫力との関係性を深堀していきます。健康促進と言っても具体的に何をどう促進するのか知っている方は多くありません。様々な効能があるなかで免疫力とどのように関係しているのか、そしてその森林浴効果を自宅で再現するにはどうしたらよいかを紹介していきます。
森林浴の効果:免疫力との関係性
森林浴にはストレス減少、緊張緩和、血圧の安定など様々な効能がありますが、免疫力の向上も実験で立証されており、日本抗加齢医学界雑誌で日本医学大学衛生学公衆衛生学の李卿(リ・ケイ)氏が森林浴による免疫力向上を正式に公表しています。
リ・ケイ氏は実際に健常な中年男性と中年女性に森林浴を行わせ、森林浴前後のヒトNK細胞の活性率を調べました。ヒトNK細胞とは、免疫システムのリンパ球です。NK細胞は、自己免疫、癌、妊娠、そしてウイルス感染に対して働くため、このNK細胞が活性化される=免疫力が高まるということです。
※アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学界雑誌の表を参考に作成
上図を見れば一目瞭然ですが、森林浴の1日後、2日後と徐々にNK活性が増加しています。もし森林浴をする時間がより長ければNK活性はさらに促進し、仮に2泊3日という期間で森林浴をすると2日目で56%まで増大するデータが確認されています。
一般的な仕事をされている方は2泊3日の森林浴を敢行するのは簡単ではないかもしれませんが、週末のどちらかを森林浴に充てるだけなら現実的なプランではないでしょうか。なお、3日間森林浴をすることで男性も女性も森林浴後30日間は高いNK活性を維持していることが明らかになっています(下図参照)。
森林浴をすることでNK活性の増大、すなわち免疫力を向上させることは実験で立証されています。ちなみに東京のサラリーマンが2泊3日で名古屋市の観光に行き、その前後でもNK活性が測定されいていますが、結果NK活性の変化がなかったことも紹介されています。
どんな人に効果がある?
森林浴は免疫力以外にも数多くの効果・効能を持ちます。その一部を以下に紹介します。
- ストレス減少
- 副交感神経の活性化
- 脈拍数低下
- 緊張緩和
- 抗癌タンパク質の増加
- ストレス状態の改善
- 最高血圧・最低血圧の抑制
(参考:特定非営利活動法人森林セラピーソサエティが森林セラピー)
裏を返せばこういった悩みを抱えている人は森林浴を試す価値があると言えます。単純に免疫力を高めたい人はもちろんのこと、職場でのストレスを緩和したい、癌を予防したい、はたまた感情の起伏を穏やかにしたいと考えている人にも森林浴は有効でしょう。
森林浴効果を自宅で再現する方法
これだけの健康促進効果がある森林浴ですが、超多忙なサラリーマンや主婦、また都心に住んでいる人にとって、森へ頻繁に、もしくは定期的に足を運ぶことは現実的に難しいものです。
そういった人にとって解決の糸口となるのが「おうち森林浴」という発想です。おうち森林浴とは、特定の樹種を使って家を建てることで、自宅にいながら森林浴効果を体験するという方法です。
そもそも森林浴の効果の源はフィトンチッドという化学物質にあります。フィトンチッドとは植物や木々が自身を外敵から守るために発する物質です。人間や動物は身に危険が迫ると逃げたり隠れたりすることができますが、木々は動くことができません。そのため、自身の体から殺菌力のあるフィトンチッドを放出して細菌などを殺しているのです。
森林浴をするということは、このフィトンチッドを浴びることに近く、つまり家でもフィトンチッドが出る建材を使用すれば、「おうち森林浴」を実現させることができます。ではどのような樹種からより多くのフィトンチッドがでているのでしょうか。次の項目で具体的に解説します。
写真:当社お客様 T様
効果的な木の種類:広葉樹より針葉樹
まず、木の種類は大きく広葉樹と針葉樹に分けることができます。広葉樹の特長はとにかく硬く丈夫なことです。室内を靴で過ごしても傷がつきづらいということで、特に欧米でフローリングとして活用されてきました。ですが広葉樹は、フィトンチッドがほとんどないものや、人間にとって特別有効でない成分ばかり発している樹種が多く、おうち森林浴には向きません。
一方、針葉樹は比較的柔らかい材質で肌で温かみを感じることができます。当然有効なフィトンチッドの成分を含む樹種が多く、おうち森林浴に最適です。
針葉樹のなかでも樹種はモミの木がおすすめ
針葉樹を使うことは分かったが、具体的にどの樹種を使うのかという疑問が出てくるでしょう。そこで確かなデータを基にいくつかの樹種を紹介します。
下図は各針葉樹が持つ精油におけるテルペン類の含有率を表した表です。ここでは化学用語を簡単に理解してもらうために、テルペン類=フィトンチッドと考えてください。テルペン類と言ってもそこからさらに枝分かれする化合物がありますが、ここでは人体にポジティブな効果・効能を持つα-ピネンとリモネンに絞ります。
※におい・かおり環境学会誌38巻6号の谷田貝氏の研究を参考に作成
精油というのは、植物が出す発揮性の油で、香りの素です。エッセンシャルオイルと言った方が分かりやすいかもしれません。α-ピネンもリモネンも健康促進への効果を持つ優秀な化合物(フィトンチッド)です。各針葉樹に長所短所ありますが、フィトンチッドにおいてはモミの木が高い数値を出しています。
α-ピネンの効果:
森林浴効果・強壮作用・血行促進作用・抗菌作用・免疫向上作用
リモネンの効果:
抗ストレス作用・害虫徐作用・脳機能更亢進作用・アルツハイマー型痴呆症原因物質阻害作用・精神を鎮静させる・デオドラント作用・育毛促進抜け毛予防効果・抗菌作用
森林浴と免疫力、おうち森林浴のまとめ
最後に森林浴と免疫力の関係性とおうち森林浴のやり方をまとめます。
- 森林浴には様々な効果・効能があり、実験で立証されている
- 木々から発せられるフィトンチッドという化学物質を浴びることが森林浴のカギ
- フィトンチッドを浴びることでNK細胞が活性化され、免疫力が高まる
- フィトンチッドをより多く放散する樹種(例:モミの木)で家を建てることで「おうち森林浴」が可能
※参考文献:フィトンチッドは疑似科学ではない?木材のもたらす真の効果を知ろう
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