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新築のシックハウス症候群はいつまで?期間と対策を簡単解説

2021/06/07(月) 健康と住宅の関係

新築のシックハウス症候群はいつまで?期間と対策を簡単解説

新築のシックハウス症候群はいつまで?期間と対策を簡単解説

以前のコラムでシックハウス症候群の症状や原因物質について詳しく解説しましたが、今回は新築一戸建てを購入した場合、いつまでシックハウスの心配があるのか、そしてどのくらいの期間が経てば改善する可能性があるのか、そしてその対策を紹介します。

なお、新築アパートや新築マンションの場合は条件が多少異なりますが、原因や対策は共通する部分が多く、気になる人はぜひ参考にしてください。

 

シックハウス症候群の症状

まずシックハウス症候群とは、室内の空気環境の悪化が原因で、健康被害を引き起こした体の状態のことを言います。室内の空気が悪いことで頭痛、腹痛、下痢、咳、かゆみなどの症状が現れます。その他の特長として、室内の空気に原因があるため、原因となる建物から離れることで症状が軽くなります。

体の部位別の特長は前々回のコラムで詳しく取り上げていますので参考にしてください。

 

シックハウス症候群の原因

シックハウス症候群の原因は主に3つに分類することができます。

  1. 化学物質
  2. カビ・ダニ・細菌
  3. ホコリ

化学物質というのは構造材となる建材や内装材、家具に使用されるワックスや接着剤に含まれるホルムアルデヒド、トルエン、キシレンといった化学物質のことです。木造住宅だとしても丸田をただ組み上げただけのような家でない限り、どこかしらで人間の手が加えられ、接着剤などが使用されています。

その接着剤の原材料となる化学物質が空気中に蒸発(発揮)することで、人間が空気として体内に吸い込み、花粉症のように自分の許容範囲を超えるとシックハウス症候群が発症してしまうのです。そして家の中にいるカビ・ダニ・細菌・ホコリも発症源となりえます。要は室内の空気環境が著しく悪いということが主な原因ということです。

身近な物の中で何からどの化学物質が放散されているのか、過去のコラムで詳しく解説していますので、参考にしてください。

 

新築におけるシックハウス症候群の期間

一般的にネット上でよく目にするのは、新築住宅も1年が経過すると化学物質の放散がほとんどなくなるという情報です。ですが、様々な論文や研究に目を通すとそうでもないことが分かります。実際に、シックハウス症候群を引き起こす代表的な化学物質「ホルムアルデヒド」の新築住宅における濃度推移を見てみましょう。

ホルムアルデヒド平均濃度

これは東京都立衛生研究所が調査したデータで、築年月数が0~6ヵ月以内の新築住宅における化学物質の室内濃度の年次推移が報告されています。この表を見る限り、ホルムアルデヒドの濃度が顕著に下がるまで3年はかかっています。

さらにシックハウス症候群の原因はホルムアルデヒドだけではなく、その他の化学物質も原因となりえます。例えばアセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどの原因物質は、この東京都衛生研究所の調査では築年数が経っても減少傾向が見られていません。

日本建築学会環境系論文集に掲載された東北大学大学院吉野博教授の調査研究でも、7年間の観察でようやく化学物質の濃度が全体的に減少傾向となったと結論づけられています。

また、カビ・ダニ・細菌・ホコリに関しては経年減少とは関係なく、掃除や換気をしているかどうかがポイントとなりますので、築年数に関わらず居住者の衛生管理がシックハウス症候群を発症させるかどうかを左右するというわけです。

ポイント

  • 新築住宅への入居1年後以降もシックハウスの懸念は継続する
  • ホルムアルデヒドに関しては4年目以降から減少傾向
  • その他の化学物質含め、全体的に4年以上の経過で減少傾向が見られる

 

放っておけば自然とシックハウス症候群は解消する?

1年という短い期間での改善は望めないにしても、放っておけば徐々によくなるのではと考える人もいるでしょう。しかし、そうではないことが吉野博教授の論文で明かされています。

経年とともに化学物質濃度は確かに減少するのですが、衣料用防虫剤や新しい家具を家に置くことで、室内濃度が再上昇してしまうからです。ただし、シックハウス対策を行うことで、確実に濃度は減少し、シックハウス症候群の症状も軽減するケースが多いので、居住者が意識的に対策を行うことが重要になります。

ポイント

  • 積極的に対策をしないとシックハウスは自然に解消しない可能性が高い
  • しっかりと対策を取ることで症状軽減に直結する

 

新築住宅に入居後の取るべき対策

これまでの内容で、シックハウスは放っておいても自然に解決する問題ではないことが分かりました。ではここから、具体的にどのような対策を取ればよいか解説していきます。

 

換気

最も簡単で安く行える対策が換気です。室内の空気を入れ替えてあげることで、空気環境がよくなり、効果的なシックハウス対策となります。下図の通り、換気「あり」と回答した人の住宅の方が、化学物質濃度の減少量が高く出ています。つまり、換気をすれば室内の化学物質の濃度が下がるということです。

換気の有無による各化学物質濃度変化量の比較

換気の方法

換気が有力なシックハウス症候群対策であることが分かったところで、今度はその方法に着目します。一般的に換気には「自然換気」と「機械換気」があります。自然換気とは例えば窓を開けっぱなしにして換気すること。シンプルに自然の力で換気することです。機械換気とは換気扇を使って動力で換気することを意味します。

そして機械換気の方が換気力は強く、対策としてはより有効です。機械換気を継続した住宅では自然換気のときに比べ3倍以上、化学物質濃度が減少しています。理想は機械換気と自然換気の両方を並行して行うことです。なぜなら、自然換気による濃度低下も無視できないほど効果があるからです。

化学物質濃度の減少量

換気の回数

次に換気の回数を確認しましょう。表では1時間あたりに0.5回以上換気をすると化学物質濃度の減少量が3倍以上に増えています。すなわち2時間に1回換気をすることで室内の空気を大きく改善することができます。

家具や生活用品への配慮

先ほどの表では配慮なしと配慮ありの違いが少ないように見えてしまいますが、実際には家具や生活用品への配慮は大きな違いを生み出します。実際に数値で表すとその違いが顕著です。上図の通り、配慮なしのときの濃度減少量が約440㎍/㎥に対し、配慮ありだと約610㎍/㎥。つまり約170㎍/㎥の差が生まれます。

厚生労働省が、化学物質ごとに人体に影響がないと推定される指針値を発表していますが、ホルムアルデヒドは100㎍/㎥と設定されています。配慮するのと配慮しないので生まれるこの差(約170㎍/㎥)がいかに大事か、お分かりいただけると思います。吉野博教授も次のように提言しています。

「防虫剤・殺虫剤・ワックスなどの生活薬剤用品の使用の中止、家具の廃棄、化学物質発生をしにくい家具を搬入するなどの対策を行い、11軒中8軒で症状が『改善・改善傾向』を示し、有効な対策だと言える」

空気洗浄機

空気洗浄機の活用は、シックハウス症候群対策において有効な手段の一つです。愛知学泉大学家政学部の鳥居新平氏の論文では、フィルター式の空気洗浄機がイオン式よりも効果的だと記載されています。

ただし、換気よりも効果は落ちるとされているので、換気や生活用品への配慮にプラスアルファで活用するのが得策でしょう。

掃除

ここまでは化学物質について重点的に触れてきましたが、シックハウス症候群はやはりダニ・カビ・細菌・ホコリが原因にもなりえます。つまり空気環境の改善には、日々の掃除が必要不可欠です。例えば、換気扇や空気洗浄機などは普段あまり掃除しにくい場所ですが、空気の出入り口となるため、あまりサボっているそもそもの換気自体が汚染されていくので、まめな掃除を心がけましょう。

リフォーム/リノベーション

コストが発生する対策にはなってしまいますが、リフォームも確実に有効な対策の一つです。具体的には換気システムのリフォームと内装材のリフォームが挙げられます。

まず換気システムのリフォームですが、現在のシステムをリフォームすることで衛生面が改善されます。また、リノベーションでより強力な換気システムを導入するという手もあります。例えば給気と排気の両方を機械で行うシステムにすることで住宅の換気力は高まります。

内装材(床・壁)のリノベーションも大きな改善が期待できる手段です。そもそもの原因物質は接着剤などが使用された内装材から放散されているので、その原因を根っこから取ってしまおうという対策です。

ただし、ただ新しい素材に替えればよいというわけではなく、自然素材を採用することが鍵となります。自然素材とはそもそも化学物質未使用の素材のことなので、それらを採用することで室内の空気が変わります。また、モミやヒノキのような樹種の自然素材には、高い調湿力が備わっており、カビが発生しづらくなります。

自然素材とシックハウス症候群の詳しい関係性はこちらのコラムを参考にしてください。

 

※参考文献:木材は高度な調質装置-木質内装材を使うことの健康上のメリット

 

引っ越し

最後に最も大胆な対策となりますが、今の家から引っ越すという方法もあります。ただし、引っ越し先は必ずシックハウス対策が取られている建物でなければ意味はありません。例えば建材に「もみの木」が使われた家では入居後シックハウス症候群が軽減する傾向にあります。

これは、これから新築一戸建ての購入を検討している方にとっても非常に大事なポイントです。新しく家を建てる場合はハウスメーカーや工務店と相談し、建材・内装材に気を使って設計しましょう。以前に木造住宅に使う建材の種類を比較しましたが、もみの木は調湿力・抗菌力・消臭力が極めて高く、ホルムアルデヒド除去率も著しく高い数値を叩き出しています。

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